村人がついた時、
その小部屋の内には、
妙な香りが漂っていた。
それが、
白檀の匂いなのか、
或いは、
蘭の香りなのか判らない。
ただ一つ判ることがある。
それが嗅いだことのない、
匂いなのである
「村長様、元気な赤ん坊ですね。おめでとうございます。」
と、召し使いの女の子が言った。
「よく見ると、村長とよく似ていますね。」
「そうですね。きっと立派な男になりますよ。」
と、まわりの村人がまた騒がしくなった。
村長は周りを構わずに、
召し使いから、
孫を渡され、
慎重に抱き、
赤ん坊の顔を、
じっと見ている。
目も、耳も、鼻も、口も、
すべては整っていて、
眉毛が厚く、
目が大きい。
それに、
手も、足も、
力強く足掻いている
しばらくの間、
村人も、召し使いも、娘でさえ、
目に入っていない。
ただただ口を閉めることすらできないほど笑っている。
「玉(ぎょく)、わが凡家(ぼんけ)の子が堅実に暮らすように、わしが凡步平(ぼんほへい)と名付ける。どうだい。」
と、娘の名を呼び、村長が言った。
玉は微笑み、
一言も出なく、
ただ寝台で赤ん坊を見つめている。
突然、
「いい名前じゃ」
と、門から一人の老人が入ってきた。
その老人は髪も髭も真っ白く、
木の杖を右手に持ち、
身には緩く、素朴な道袍を着ていた。
つづく
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Judaさん、
ありがとうございました。
http://lang-8.com/kakukangen/journals/58409416776298966220542693064303953840
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